本の概要
この本は、一般社団法人 エシカル協会の代表理事である末吉里花さんの著作となります。
末吉さんは「世界ふしぎ発見!」というテレビ番組のミステリーハンターとしても活躍されていた方です。
エシカルとは、もともと「倫理的な」「道徳的な」という意味です。
この本では、エシカルの考え方に即した「私たちの良心と結びついていて、人や社会、環境に配慮されている」製品を選び、買い、使う生活をオススメしています。
また、
- 服
- アクセサリー
- 雑貨
- 食品
- 紙
- 電子機器
といった様々な製品を安価に作るために、世界中で行われている環境や人権を蔑ろにした生産の現場について解説しています。
その一方で、我々は「よく考えて物を買う」ことにより、そんな世界の悲しい現状を変えることができると力強く述べています。
小さな行動から世界を変えていくことの大切さを教えてくれる本です。
また、巻末にはエシカルなものづくりをしている様々なメーカーの一覧が掲載されており、私達が実際にエシカルな生活をしていく上で非常に参考になります。
この本の中で印象深かった点
安い製品にはワケがある
私達は製品の安さの理由として、大量生産しているから、人件費の安い海外で作っているから、などと普通は考えます。
この本ではそこから更に一歩踏み込んで、
- 服の生産
- 綿花(コットン)の栽培
- カカオの栽培
- サッカーボールの製造
- レアメタルの採掘
などの様々な原料・製品の生産場面において、海外で起きている
- 長時間労働
- 低賃金
- 児童労働
- 紛争
といった問題の現状がありありと書かれています。
読んでいて心苦しくなる部分もありますが、その分胸にグッとくるものがあります。
その一方で、こういった現状を改善するための「フェアトレード」「認証マーク」などの様々な活動についても書かれており、明るい未来を感じました。
「物語」のある製品の良さ
末吉さんはエシカルな製品の要素の一つとして「物語」のある製品を挙げています。
それぞれの作り手や売り手の思いがぎっしりと込められている製品には、ストーリーが生まれる。
そこにはオリジナリティが宿る。
オリジナリティのある製品に囲まれて過ごすことができれば、毎日の生活が幸せになる、と。
確かに私自身が長く大切に使い続けている物は、誰かからプレゼントでもらったり、自分で仕様を色々伝えて注文したりなど、物語のある製品が多い印象です。
物語のある製品には自然と愛着が湧き、そもそも質が良い物が多い。
この「物語」のある製品という視点はエシカルの考え方においてとても重要であり、私自身が今後買い物をする時も大切にしていきたいなと感じました。
想定質問への真摯な回答
私がこの本を読み進める過程で、「ここは少し矛盾しているのではないか?」と疑問を感じることがありました。
末吉さんも読者がそういった疑問を抱くことを予想していたのか、本の中で自ら想定質問に答えている箇所があります。
例えば、
〇安い商品の生産には問題があるとはいえ、それを買い控えると働いている人の生活が成り立たなくなるのでは?
〇遠くの国から商品を輸入するフェアトレードは環境に悪影響があるのでは?
などです。
なかなか痛い所であり、一概に判断できない難しい問題ではありますが、こういった疑問に対しても論理的かつ真摯な回答がなされています。
回答内容は実際に本を読んで確かめていただきたいですが、末吉さんのエシカルに対する強い想いが伝わってくる箇所であり、非常に好感を持てました。
できる範囲で、最良の選択をする
末吉さんはエシカルな生活を徹底することを読者に求めている訳ではありません。
あくまで、自分のできる範囲で最良の選択をすることを推奨しています。
いくら環境や人権のためとはいえ、エシカルな生活を突き詰めることで私達自身の生活が苦しくなっては元も子もありません。
使命感だけに根差した行動はいつか無理が来て心が折れてしまうと私は思っています。
そうではなく、エシカルな行動や買い物をすることを意識しつつも、無理せず自分が可能な範囲で取り組む。
そうやって各人が細く長く続けていくことで、エシカルな生活が世の中に広まっていくのではないかと私は感じました。
まとめ
今回の記事では、【はじめてのエシカル 人、自然、未来にやさしい暮らしかた】の本を紹介しました。
SDGsやESGといった概念が社会に浸透しつつある中で、
「もっと人や環境に配慮した生活をしたいけど、何から始めれば良いのか分からない…」
と感じている人に、この本は「エシカルな生活」という誰にでもすぐ実践できる行動を教えてくれます。
社会貢献に少しでも興味のある方はぜひ読んでみてください!